おとぎ話
ロイヤル卓「六花の夜の夢」に登場する、おとぎ話です。
事前資料としてご覧ください。
むかしむかし、あるところに。
森におおわれた、小さいけれど、豊かな国がありました。
その国の王は心優しく、また勇敢な人でしたが、お妃がいませんでした。
ある日、王のお妃を選ぶために、国を上げて舞踏会が開かれました。
そこへ、お妃候補として六人の姫君たちがやってきました。
六人の姫君たちは、みな花のように美しく、それぞれお妃として申し分のない人々でした。
そのとき、濡れたような黒髪の、美しい姫君が、舞踏会に遅れてやってきました。
その黒髪は、この国を覆う深い森にかかる、夜のとばりのようでした。
人々はこの姫君を怖れましたが、王は快く出迎えました。
やがて、王はこの黒髪の姫君に恋をし、また姫君の方も、王を愛しく思うようになりました。
やがて、舞踏会が終わるころ。
六人の姫君たちは、それぞれ王の前に進み出てこう言いました。
「私をお妃に選んでいただければ、素晴らしい宝を差し上げましょう」
六人の姫君たちは、それぞれ素晴らしい姫君でありましたが、彼女たちが約束した宝は、それにも劣らぬ素晴らしいものばかりでした。
最後に、黒髪の姫君が王に進み出て、こう言いました。
「王よ。あなたがもしも望むのであれば、六人の姫君も、また、彼女たちが約束した宝も、全てをあなたのものにして差し上げよう」
「ただし、もしそれを望むのなら、七つ目の宝は決してあなたの手には入らないだろう」
「七つ目を手に入れたいのならば、他の六つを全て手放さなければならない」
王はそれを聞いて、黒髪の姫君の前にひざまづきます。そしてこう言いました。
「では、私に七つ目をいただけますか」
黒髪の姫君は王に応えて、七つ目の宝――国に長い長い繁栄と平和、そして豊かな土地を約束しました。
姫君は、森に住む妖精の女王だったのです。
こうして王はお妃をめとり、国は豊かな森の恵みと妖精たちの加護を受け、栄えました。
人々と妖精たちは王とお妃を称え、二人は民に祝福されながら、末永く幸せに暮らしました。