久方菜乃花関連,  テキスト

本音しか言えなくなる薬2

突然思いついて言い出しっぺなので書きました。
本音しか言えなくなる薬を飲んでしまったクリフくんの話です。
なりへいさんのPC・龍巳クリフくんをお借りしております。

 この状況、どうしたものか。
 龍巳クリフは腹の底から大きく息を吐いて、その場に座り込んだ。場所はUGNの訓練場からほど近い、寮の空き室だ。
 色々な理由で帰る家を持たないチルドレンやエージェントたちは、完全に自活できるようになるまではこういった寮に入ることが多い。今は入れ替えの時期らしく、いくつかの部屋が空き部屋になっているのだ。
 ドアを背もたれ代わりにしつつ、頭を抱える。どうしてこんなことになったのか。
 今日は予定通り、UGNの施設で訓練。そのあとは腹ごしらえでもしてさっさと帰宅。任務もない緩いスケジュールだったはずだ。それが、まさか訓練後に振舞われたものの中に「あんな薬」が入っているだなんて、誰が予想するだろう。
 クリフは絶望的な気持ちで、先ほど連絡してきた椿の言葉を回想する。
 『どうやら、訓練後に出したお茶の中に、何かおかしな薬が混ざっていたらしいの。人体に影響はほとんどないから安心してほしいんだけど、どうやら『あることは全部』話してしまうようになるみたいで……』
 そう言った椿自身も、珍しく弱音を吐くときのトーンだった。
 『つまりは、薬の効果時間中は『本音しか言えなくなる』と思ってくれればいいわ。誰が飲んだのか、どれくらい効果時間があるのか、それも調査中だから、少し時間を頂戴』
 本音しか言えなくなる薬! 聞いたときは思わず真顔になった。
 誰だ、そんなバカみたいな……いや、ひたすらに面倒な薬を作ろうとした奴は。自白剤にしては大雑把が過ぎ、ほんの悪戯心にしてはタチが悪すぎる。
 だがそれだけなら、「はいそうですか」と効果時間が過ぎるのをのんびり待つだけでよかった。
 「(なんでこんなときに会うんだよ……!)」
 どんどん、と、誰かが強めにドアを叩く音がする。
 ……龍巳クリフはわけあって、薬の効果切れをのんびり待つわけにはいかなくなったのだ。
 「クリフくん! ねえクリフくーん! あーけーてー!」
 ドアの向こうでクリフの名前を呼ぶ、明るく騒がしい少女とばったり会ってしまったから。

* * *

 「ねえ、クリフくーん! あーけーてーよー!」
 どんどん、ともう一度ドアを叩いてみるが、返事はない。確かにここに入っていったのに。菜乃花は眉根を寄せて「うーん」と唸った。
 今日もたまたまUGNに来ていた菜乃花は、クリフもちょうど訓練が終わったと小耳にはさみ、意気揚々と遊びにやって来たのだ。あわよくば、宿題を手伝って……もとい、教えてもらおう、という算段もある。
 だが、菜乃花の顔を見るなりクリフは青ざめ、踵を返して一目散に逃げだした。しかも無言で。
 菜乃花はクリフに、今まで散々迷惑もかけたし、面倒も見てもらった覚えはある。そのたびに説教や小言も受けたことがあるが、顔を見るなり避けられた……なんてことは、今回が初めてだった。
 「なんでだろ……?」
 うぅ、と、呟く声の音階が自然と落ちる。クリフからの返事は相変わらず無言だ。
 しかしだ。菜乃花は顔を上げる。こんなにクリフが反応を返してくれなかったことはない。だから、きっと非常事態なのかもしれない。
 「クリフくん、ね、もしかして……具合が悪いの?」
 菜乃花の知っている龍巳クリフという男の子は、怒ると少し怖いけれど、道理のないことで怒る人ではない。クリフだって人間だから、機嫌が良くないことだってあるだろうが、それにしたってこんな遠回りな怒り方はしない。
 だから、もしかしたら具合が悪いのかもしれない、と菜乃花は思い至った。
 そういえば顔色も悪かったし、何か隠しているようなそぶりだった。クリフは自分が丈夫だからと言って、多少の怪我は我慢して放置することもある。
 でも、最初は大丈夫だと思っていても、あとから大変なことになる怪我や病気はいくらでもある。
 ……何より、本当に苦しいときは、声も上げられないことを、菜乃花は知っている。
 「クリフくん、わたし、お医者さん呼んでくるね? もし違ってたらごめんね、わたしのこと、そのときは怒っていいから」
 返事はやはり、ない。菜乃花はしばし、俯いて考えた。……次にドアを叩いて、それでも返事がなかったら、医務室にいってお医者さんを呼ぼう。勘違いで、菜乃花が怒られるくらいはなんでもない。
 どんどん、ともう一度強くドアを叩く。ドアは開かない。
 菜乃花は息をついて、いよいよ医者を呼びに行こうと決意した。ドアを何回も叩いたせいで、ほんのりと赤く染まる手を見下ろしてから、踵を返す。
 そのとき、ようやく背中側で「がちゃり」とドアの開く音がした。
 「菜乃、」
 「……クリフくん! よかったぁ!」
 肩越しに振り返ったそこには、何とも言えない顔をしたクリフの姿があった。
 菜乃花はクリフの顔を見るなり、クリフの声を遮って迷わずクリフに飛びつく。衝動に任せた行動だったので、軽く突進するような形にはなったが、さすがいつも任務で前線を担う男の子だ。菜乃花くらいが飛びついたくらいでは、びくともしない。
 「おい、菜乃花……」
 「よかった、大丈夫? クリフくん、訓練で怪我したとか? 具合、悪い?」
 「いや、その、病気とか、怪我じゃない。大丈夫だ」
 しがみつかれたまま、クリフは菜乃花を宥めるようにそう言った。本人の口からそう聞けて、菜乃花はようやくほっと胸を撫でおろす。
 「よかった、動けないほど具合が悪いんじゃないかって思っちゃったよ。……あっ、じゃ、じゃあ、わたし、怒られる?」
 はっ、として菜乃花が顔をあげる。すると、クリフは一瞬目を見張って菜乃花の瞳を見つめ返した。クリフの瞳に映った自分が見えそうだ、なんて思ったとき、クリフはさっとまた視線を逸らす。
 心なしか、彼の頬や耳が赤い気がした。はくはくと、何か言おうとしているかのように口が動いているが、言葉は出ていない。
 「……っ……怒るわけ、ないだろ」
 やっと言葉になったらしい声は、絞り出したようなもので、なんだかクリフが本当に言いたかった言葉ではない気がした。けれど、菜乃花は先ほどのように無言で逃げられなかったので、すぐに上機嫌に笑うことができた。
 「ほんと? えへへ、よかった」
 「……すぐ、出てこなくて悪かった。お前に会いたくないとかでは、なくてだな……」
 「ううん、大丈夫! クリフくんが元気ならいいの」
 「けど、手、そんなにするまでドア叩くな。……お前のほうが怪我するだろ」
 「もぉ。わたしだってオーヴァードなんだから、これくらい平気だよ。……ところで」
 菜乃花は相変わらずクリフに抱き着いたまま(突進したままともいう)、「うーん」と小首をかしげる仕草をしてみせる。
 「今日は言わないんだね、「離れろ」って。いつもすぐに言うのに」
 そう指摘してみると、途端にクリフばつが悪そうな顔になる。何か言いかけるように口を開きかけたが、そのまま結局何も言わず、口元を片手で押さえる。
 「それは…………と、とにかく、中入れ。廊下で立ち話することじゃない」
 「あ、うん。お邪魔します」
 やっぱりいつもと様子が違うなあ、と訝しがりながらも、菜乃花はドアを開ようやくくクリフから離れる。そしてそのまま、部屋の中に入った。
 部屋に入る直前、小声でクリフが「冗談だろ」だとか、「本当にあることは全部?」とか、「誰がこんな薬」とか言った気がしたが、一体なんのことか、菜乃花にはよくわからなかった。
 
 中は普通の、標準的なワンルームだ。窓がひとつとデスク、ベッド。簡易的なキッチンと、シャワールーム、トイレが備え付けられている。カーペットは前に使っていた人が残していったのだろうか。なぜか残っていた。
 菜乃花はくるりと部屋を見渡した後、ベッドの上に座ることにする。なかなかいいクッションだ。
 「何か、訓練後にもらった飲み物に、手違いで変な薬が入ってたみたいで……椿さんからも説明受けたし、時間が経てば効果もなくなるらしい」
 クリフはデスクに備え付けられていた椅子に座りつつ、ぽつぽつと話し始めた。
 「そっかあ、椿さんがそういうなら、きっと大丈夫だね。でも、変な薬って?」
 言われてみれば、なんだかみんな忙しそうに走り回っていたなあ、と思いながら、気になるところを菜乃花が尋ねる。
 するとクリフは少し考えこんでから、視線を逸らした。そしてまた先ほどのように、口を開いて何か言いかけては、それを途中でやめて口元を片手で押さえてを繰り返す。
 「クリフくん?」
 まるで何か言いたいのに、声が出ないかのような仕草だ。菜乃花が小首をかしげて名前を呼ぶと、クリフは観念したかのように小さくため息をついて、口を開いた。
 「…………ほ、」
 「ほ?」
 「本音しか、言えなくなる薬、らしい」
 「本音しか言えなくなる」
 菜乃花はクリフの顔を間近で見上げながら、その意味を咀嚼するために繰り返す。
 ……本音、といえば、本当のことだ。普段誤魔化したり、うやむやにしている本当のこと。
 それって何か問題なのかな、とふと考えてしまったが、そこで思考を一旦停止させる。嘘を言うのはよくないことだが、何だって本当のことばかりいうのが「良いこと」とは言えない。菜乃花だってそれくらいはわかる。
 それに、見ている限りクリフはそれで困っている。だったら、やっぱり問題だ。
 「とにかく、放っておけば大丈夫だ。心配するな」
 何か出来ることはないか、と菜乃花が尋ねようとしたそのとき、クリフのほうが先にそう遮った。
 「え、えっ、放っておけばって……いやだよ、心配する! わたし放っておきたくない。だってクリフくん絶対困ってるし、それにわたし、今日クリフくんに会いに来たんだよ。ほら、クリフくんが外に出たくないなら、わたしにお使いとか頼んでいいよ! なんでも言っていいよ!」
 菜乃花は思わずベッドから立ち上がり、クリフにまくし立てた。
 純粋に、クリフが困っているときくらい、力になりたい。
 「なんでもって言ったって、お前……今は……」
 ……そう思ってのことだったが、クリフは心底困った様子で、菜乃花から目を逸らしてしまった。
 なんだか、想像以上にすごく困らせている気がして、菜乃花は目尻を下げて俯いた。
 「えっと……やっぱりわたしじゃ、力になれない?」
 菜乃花としてはクリフの力になりたいのであって、邪魔になりたいわけでも、迷惑をかけたいわけではない。
 力になりたいとは思うが、それは菜乃花の我儘であって、無理に通すようなことはしたくない。
 菜乃花は何を言われたって、クリフになら大丈夫だ……と思う。それは、面と向かって「嫌いだ」なんて言われたらショックだけれど、嫌われたわけではない、ともうわかったので、十分だ。
 菜乃花は祈るように手を組んで、一歩、クリフに向かって近づく。
 「あのね、もしも、クリフくんがわがまま言っちゃうかもって思ってるんだとしても、いいんだよ。わたしは聞きたいもん。わたしのほうが、いっつもクリフくんにわがまま言ってるし、こんなときくらい、クリフくんのわがまま聞きたい」
 「いや、その、俺は…………」
 「クリフくんがすごく強いのは知ってるよ。いつも助けてくれるし、かっこいいし、わたしよりUGNとしても先輩なのはわかってる。でもね、クリフくんだって、誰かに頼っていいの。わたしはっ」
 何か言いかけたクリフを遮って、菜乃花は構わず続けた。
 ……いつもたくさん話すほうだが、なぜか今日は特に口をつぐむ気になれなかった。
 「わたしは……ほんとは、クリフくんが助けてほしいとき、助けられるようなわたしでありたいんだよ」
 まだまだ、全然かもしれないけど、と最後にくっつけて、菜乃花はやっと言葉を切る。クリフはもう茫然としているようで、言いかけた言葉まで飲み込んで、菜乃花を見上げている。
 久方菜乃花は、本当は、大切な人を──クリフを助けられるような少女でありたい。
 今までは……病気だったときは、いくらそう願っても、それは叶わなかった。両親、数少ない友達、担当の先生、看護師さん。いつも菜乃花は助けられる側で、彼らが困っているとき、恩返しすることさえ出来なかったのだ。
 だから、今度こそ。
 ……だけど、やっぱりそれは、菜乃花のわがままにすぎないのかもしれない。
 クリフはそんなもの必要ではなくて、病気が治ったくらいでは、頼りなさ過ぎて。菜乃花は力不足なのかもしれない。
 その可能性に今更気づいて、少しおじけづいた。
 「クリフくんは……わたしには、本音、言いたくない? わたしじゃ無理かな」
 言葉にすると、それは少し、いやかなり、寂しいことだと思ってしまった。でも、菜乃花はぐっとその感情を飲み込む。
 ──クリフは菜乃花にとって、大事な人だ。どうでもよくない、毎日でも笑っていてほしい人だ。結果的に困らせてしまっていることはあるけれど……
 だからこそ、本当に嫌がっているのだったら、無理は言いたくない。そう思って、詰めた距離を一歩、後ずさった。
 「そうじゃない! そうじゃなくて……」
 そのとき、菜乃花の手をクリフが握った。
 菜乃花は少し驚いて、自分の手を握っているクリフの腕を見下ろす。
 ……クリフが菜乃花の手を握るのは、初めてではない。けれど、それはいつだって緊急事態のときだ。それこそ、任務中に敵に追われている時だとか。だから思わず、まじまじと見てしまった。
 当然だけれど、温かい。男の子の手だ。同年代で、そう変わらない年月を生きている人だけれど、菜乃花とは決定的に違う。筋張っていて、大きくて、力の強い腕だ。
 「そうじゃ……なくて?」
 急にそのことが気になって、菜乃花は心臓が強く脈打つのを感じた。それから意識を逸らすように、しかし、クリフの言葉の先が聞きたくて、促すように彼の言葉を繰り返す。
 そのまま、自分の手を掴んだ腕を辿って顔を上げ、クリフの顔を見ると、クリフはまた、口元を押さえてきまり悪そうな顔をしていた。やはり、少し顔が赤い。
 しかし、クリフは手を放そうとはしなかった。そのまま、クリフは短くない間黙っていたが、菜乃花も何も言わない。この手を離されない限り、待っていたほうがいい気がした。
 「……大事なことだから。軽々しく、口走りたくないんだ」
 そうして、やっとぽつり、とクリフが呟いた。
 「大事なこと、だから?」
 「そうだ。どうでもよくないから……間違って伝わったら、困る」
 続けたクリフの言葉はやはり途切れ途切れで、絞り出すようだった。でも、握った手は離さない。そのことが、菜乃花には酷く嬉しかったし、安心した。
 「俺自身にだって、自分の『本音』っていうか、『本当の気持ち』なんてちゃんとわかってない。そんな状態で、口にするのは……嫌だ。それこそ、薬に言わされてるってことになるだろ」
 クリフの言い分に、菜乃花は頷いた。それはそうかもしれない。
 本来、気持ちとは言葉になっていないもので、言葉にするとちょっとズレるものだ。ちゃんとした言葉を当てるには、たくさんの勉強と経験が要る。
 「だから……お前に本音を言いたくないわけじゃなくて、言えないんだってことだ」
 「言いたくないわけじゃなくて、言えない……」
 菜乃花は再び、クリフに言われた言葉を反芻して咀嚼した。
 本当に大事なことだから、言いたくないのではなく、言えない。だから、本音しか言えなくなる薬を飲んだら、話せなくなる。
 「そっか、うん。わかった。よかったぁ、クリフくんに嫌われたんじゃなくて」
 ほっ、と、このときはじめて、菜乃花は本当に安堵した気がした。意識せずとも答える声は弾んだし、自然と顔には笑顔が浮かぶ。
 「嫌うわけないだろ。そんな心配してたのか」
 すると心なしか、クリフのほうも肩の力を抜いたように見えた。
 嫌うわけない、という言葉は口をついて出たのだろうか。だとしても、「今は本音しか言えない」のだから、それは本当のことだ。そんなことを考えて、ふ、と菜乃花の笑みがまた広がる。
 「(……だから、最初会ったとき何も言わずに走って行っちゃったんだ。クリフくん、私のことが本当は嫌だとか、迷惑で避けたわけじゃないんだ。よかった)」
 そうっとお互いに握った手を確認したが、クリフはまだ放さないので、なんとなくそのままにしておく。
 なんだか、滅多にしてくれることではないので、さっき抱き着いたときみたいに「離さないの?」とか指摘するのが、とてももったいないと思ったのだ。
 幸い、クリフはこの状態よりも薬のほうが気になるらしく、まだ何も言わない。
 「にしても……正面切って向かってこられるならともかく、こういう薬は、とんでもなく対処に困るな……」
 「私に、じゃなくて、薬に困るの?」
 「そりゃあ、菜乃花に会いたくないわけじゃないから……って、ああもう、本当に勘弁してくれ」
 安堵感のせいか、クリフのほうが口を滑らせた、と言わんばかりにまた口元を押さえて顔を赤らめた。
 薬のことが本当ならば、今のもクリフの「本音」なのだろうか。だとしたら、クリフには申し訳ないが、嬉しい。菜乃花は思わず、小さく声を弾ませて笑った。
 「ううん、それは聞けて嬉しい。わたしもクリフくんに会いたくて来たんだもの」
 きゅっと、握られた手を握り返してみる。さすがに気付いたのか、クリフが今度はびくっと身体を震わせて、自分の手を見降ろした。
 そろそろ離れてしまうだろうか。そうだったら、なんだかもったいないなあ、と菜乃花は笑顔のままで思う。

 ……大事なものほど大事に包もうとするのが、龍巳クリフという男の子だった。彼は心も言葉もそっと閉ざして、中にある大切なものを守ろうとする。
 菜乃花はそれが強く優しくて、素敵だなあと思えるのと同じくらい、中身が気になって、心配になってしまう。
 大切なものを守ろうとするあまり、悲しみや切なさでいっぱいになっていはしないだろうか。
 なんでもない、と口で言いながら、ときおり寂しさに沈んではいないだろうか。
 そんな強がりは、ほんの少しだけ、菜乃花にも覚えがあるから。

 ……だから、その中身が少しこぼれているとき。ちょっとくらいは、すくわせてほしいと思うのだ。

 「ドア、叩くのやめなくてよかった」
 「……今度はちゃんと開けるから、手が痛くなるまでやるのはやめろ」
 「はぁい。クリフくんが開けてくれたらね!」
 「わかった、わかったから。まったく……」
 大きくため息をついて、クリフは「仕方ないやつだな」というように苦笑する。
 菜乃花はそれを、幸せそうな笑顔で見つめ返した。

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